観測ログ #45|産院の個室と去年の記憶がほどける日

日々のこと

9月14日(まえがき)
従姉妹が出産した翌日。花や風船より、静かな顔見せを選ぶ日。産院の個室に入ると空調の低い音と消毒液のにおい。小さく握りがほどける腕の中に“はかない温度”が乗った。

個室での数十分

  • まず消毒、名札確認、滞在時間の説明。
  • 従姉妹はまだ戦い上がりの顔。言葉は短く、目だけが強い。
  • 抱き上げると、軽い。重さというより密度がない感じ。呼吸は規則的、時々ひっ、と小さく跳ねる。
  • 娘は横で身を乗り出して観察モード。表情が“子分ができた顔”になっていて笑う。

出産祝いは現金+おしりふき

使い道が自由なものと、今すぐ助かる消耗品。メッセージは短文だけ添えて手渡し。

偶然の同期:誕生日と予定日

  • 誕生日が、母と親友Oと同じ。日付が家族線と友人線をまたいで接続。
  • 予定日より1週間早い。小さな前倒しで、家のカレンダーの意味が一つ増えた。

名前メモ

細身なあの女優と同じ名前

去年の娘の誕生日を逆照射

  • 去年のあの日の産声、空調の風、モニターのピコ音、ガウンの擦れる音——断片が勝手に再生。
  • 初めて抱いたときの“落としそう感”と“目を離せない感”が同時に来て、腕の内側がこわばった。
  • 家に帰ってから哺乳瓶の角度に自信がなくて、夜中のリビングで検索ばかりしていた。
  • 今、同じ温度が腕に乗りながら、去年の“おっかなびっくり”が“段取りの手つき”に置換されていることを知る。時間がやってくれた仕事、けっこう大きい。

娘の反応ログ

  • 個室の端でベビーカーから身を起こして凝視。声は出さないけど、目の奥が忙しい。
  • 帰り道はいつもより静か。ベビーカーの天蓋を見上げたまま、たまにニヤッとする。まだ言葉にならない何かを飲み込んでいる顔。

面会の締め方

  • 体力ゲージが赤い従姉妹に長居は禁物。写真数枚、短い動画撮って切り上げ。
  • 扉の前で手を振って、早めに撤退。嬉しさは持ち帰る。

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